最初はみんな、やる気がある
Webサイトを作る仕事を長くやっていると、だいたい同じ光景に行き着く。
最初はやる気がある。構成を考える。技術を選ぶ。デザインを詰める。コーディングする。デプロイする。クライアントも喜ぶ。でも、途中から変わる。
誰もメンテナンスしなくなる。CMSの更新が止まる。画像が古いまま。お知らせが2年前で止まっている。問い合わせフォームが動かない。
よくある失敗パターン
「更新しやすいCMS」を入れたのに、誰も更新しない。技術的な問題ではなく、運用の問題。
「買わせる」のではなく「買わない選択肢を消す」
あるECサイトのプロジェクトで、コンバージョン率を上げる依頼を受けた。
最初は普通のアプローチを試した:
効果はあった。でも、劇的ではなかった。CVRは2%から2.8%に上がった程度。
転換点
ある日、データを眺めていて気づいた。
「カートに入れたのに買わない人」が全体の60%もいる。
この人たちは、欲しいと思っている。カートに入れるという行動まで起こしている。でも、買わない。なぜか。
実装した仕組み
結果:CVRは2.8%から6.2%に跳ね上がった。
これは正しかったのか
数字としては成功した。クライアントは喜んだ。ボーナスも出た。
でも、これは「買わせる技術」ではなく、「買わない自由を奪う技術」だった。
設計の本質
技術的には何も難しくない。難しいのは「これをやるべきか」という判断。
今、どう考えているか
あれから5年経った。同じ依頼が来たら、たぶん断る。
理由は2つ:
- 短期的な数字は上がるが、長期的には信頼を失う — 緊急性を煽られて買った人は、冷静になった後に後悔する。リピートしない。
- 自分が作りたいものではない — 技術は中立ではない。使い方によって、人を助けることも、操ることもできる。
まとめ
Web開発は「できる」と「やるべき」が常に一致するわけではない。
技術的に可能なことと、倫理的に正しいことは、別の話。
「買わせる仕組み」を作ることはできる。でも、それが本当にユーザーのためになるのか。長期的にビジネスに貢献するのか。
作る前に、考える。それが設計者の責任だと思う。